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人工衛星の画像を活用した水稲共済損害評価確立事業
〜来年度から試行運用〜

 NOSAI団体は、人工衛星のリモートセンシング(宇宙からの地球観測)技術を利用した水稲共済の新たな損害評価方法の開発を進めている。将来的には検見調査に換え、導入することを想定している。
 農林水産省の補助事業「衛星画像を活用した損害評価方法の確立事業」を受け、2008〜13年度の6年計画で取り組む。
 3年目となる本年度は、35道府県で実施する。11年度には実施県をさらに拡大し、北海道と宮城県は本格導入に向けた試行運用を開始する予定。14年度からの全国的な本格実施を目指している。


■ 画像を解析して収穫量を推計

 リモートセンシングによる水稲損害評価は、収穫直前の損害評価適期の衛星画像を取得。被害圃場の画像を解析(緑色、赤色、近赤外の光の波長データを抽出)して「収量推計式」に当てはめ、共済金の算定に必要な10アール当たり収穫量(単収)を推計する。
 稲が実って収量の高い圃場やイモチ病などのまん延で穂が少なく茎葉が傷んだ圃場など、収穫期の水田はそれぞれ状態の違いに応じ光の波長が異なっており、画像を解析すると単収の推計が可能となる。本事業は、過去を含む被害データを集めて波長データと収量との関連(収量推計式)を明らかにして、収量推計の精度を確保し、損害評価方法として確立するのがねらいだ。
 衛星画像は数十キロ四方の広域に分布する水田を一度に観察できる。衛星画像中の被害圃場の位置は、電子化された耕地図情報とシステム上で重ね合わせて特定する。
 「衛星画像を活用した損害評価方法の確立事業」は、09年度に岩手、秋田、山形など29府県が加わった。10年度は新たに茨城など4県が検討を始めている。
 08年度から3年間は、衛星画像データと水稲圃場の実測調査データを集積している。冷害やイモチ病、風水害など災害種類ごとに、毎年50筆以上を目標にデータを収集した。被害程度の甚大な圃場から軽微な圃場まで幅広いデータを取ることが、精度の高い収量推計式作成のポイントになる。
 並行して、過去の衛星画像データと実測調査データとを照合してデータの補完を行い、収量推計式のモデルを見直すなど精度の向上を図る。北海道と宮城県で来年度に予定する試行段階では、農家の被害申告から、衛星画像による収量推計、共済金の算定まで一連の流れをテストする。



■ 担い手の支援や補償充実に期待

 農家の高齢化・後継者不足に伴い、被害発生時の損害評価員の確保が課題となってきた。衛星画像を活用した新たな水稲損害評価方法の開発は、損害評価の負担軽減とともに、損害評価に客観性や科学的根拠を求める農家の声の高まりも踏まえた。
 加入全筆を合理的、効率的に損害評価できる体制が整えば、生産量の全量をライスセンターなど共同乾燥調製施設に搬入していない人でも円滑に全相殺方式(最高補償割合9割)に加入でき、担い手への経営支援や補償の充実も図れると期待される。


■ 災害時に重要な評価員の役割

 現行制度では、被害申告のあった全筆を悉皆(しっかい)調査する検見調査は、損害評価員が3人ずつで評価班を編制して行う。冷害や台風災害など広域的な災害でも2日程度で調査できる体制確保が求められている。検見調査は、圃場内外からの観察と穂を触ったり握ったりして、穂数や粒数、穀粒の充実度合を確認、合議を基に単収を把握する。栽培経験が豊富で、地域的な栽培の特徴にも精通した人材が役割を担ってきた。
 NOSAI部長や損害評価員からは、「衛星画像に基づく損害評価方法が実施されれば、損害評価員は必要ないのか」と疑問の声もある。しかし、これまでの研究から、衛星リモートセンシングによる損害評価方法には、得意な分野と不得意な分野があることが明らかになってきた。冷害やイモチ病、風水害による損害はとらえやすいが、獣害など衛星画像撮影後も刻々と被害が大きく変化するものは、その損害がとらえにくい。適切な肥培管理を施されていたかどうかの確認も損害評価員でなければ対応できない。
 衛星画像に基づく損害評価方法は、損害評価員の確保が難しくなる中で、特に大規模な災害において、円滑かつ迅速な損害評価を確保するために重要であり、その着実な研究・開発と本格実施が期待される。



(農業共済新聞 7月1週号1面より)

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